論文紹介
Papers
>オキナワモズク由来フコイダンの論文
__________________________________________________
No. 1 |
オキナワモズクから分離したフコイダンが高コレステロール食給与ラットの血清コレステロール濃度に及ぼす影響 |
上原 めぐみ、田幸 正邦、川島 由次(1)、福永 隆生(2)、尚 弘子(3)、知念 功、本郷 富士弥 |
1 琉球大学農学部生物資源科学科生産環境学科、2 鹿児島大学農学部生物資源化学科、3 放送大学沖縄地域学習センター |
応用糖質科学 第43巻 第2号 p.149-153(1996) |
オキナワモズクおよびそれから抽出したフコイダンを高コレステロール食に添加してラットに与え、血清および肝臓の脂質成分に与える影響を調べた。その結果、オキナワモズクおよびフコイダンを与えたラットの血清および肝臓の総コレステロールは、対照のセルロース食群の総コレステロールより低い値を有し、コレステロールの上昇抑制作用が認められた。逆に、HDL-コレステロール(善玉コレステロール)は高い傾向を示した。また、フコイダンおよびオキナワモズクはリン脂質濃度を低下させる機能も有することが示唆された。以上の結果から、フコイダンおよびオキナワモズクはラットの血清および肝臓のコレステロールの上昇を抑制する作用があることが明らかとなった。
|
__________________________________________________
No. 2 |
オキナワモズクからフコイダンの分離・同定 |
田幸 正邦(1)、上原 めぐみ(1)、川島 由次(2)、知念 功(1)、本郷 富士弥(1) |
1 琉球大学農学部生物資源科学科、2 琉球大学生産環境学科 |
応用糖質科学 第43巻 第2号 p.143-148(1996) |
オキナワモズクからフコイダンを分離し、化学成分と物理化学的性質を調べた。フコイダンは、オキナワモズク(湿潤)から1.5〜1.8%の収率で分離した。フコイダンの全糖、ウロン酸、灰分、硫酸、および水分含量は、それぞれ67.2、13.5、23.0、11.9、および3.2%であった。また、ゲルクロマトグラフィーの結果から、フコイダンは均一で分子量は約500,000と推定された。フコイダンをペーパークロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーにより酸加水分解して、L-フコースとD-キシロースを同定した。本フコイダン水溶液(0.4%)の旋光度は、60℃で-0.354°を有し、温度の低下に伴って徐々に減少した。フコイダンの赤外吸収スペクトルは硫酸を含む多糖の特性を示し、広い波数領域で標品のフコイダンとほぼ一致した。モズクから分離したフコイダンは硫酸基の存在により、血液凝固阻止作用や抗腫瘍効果、抗エイズウイルス作用を有することが報告されていることから、オキナワモズクから分離したフコイダンにもこのような生理活性を有する可能性が期待される。
|
__________________________________________________
No. 3 |
Inhibitory Effect of Cladosiphon Fucoidan on the Adhesion of Helicobacter pylori to Human Gastric Cells |
ピロリ菌のヒト胃細胞への付着に対するオキナワモズク属フコイダンの阻害作用 |
Hideyuki SHIBATA(1), Itsuko KIMURA-TAKAGI, Masato NAGAOKA, Shusuke HASHIMOTO, Haruji SAWADA, Sadao UEYAMA, Teruo YOKOKURA |
1 ヤクルト中央微生物研究所 |
J Nuti Sci Vitaminol, 1999, 45, 325-336 |
ピロリ菌と胃細胞の付着に対するオキナワモズク属由来フコイダンの阻害効果を、細胞培養実験等で調べた。ピロリ菌と胃がん細胞の結合阻害分析の結果、オキナワモズク属由来フコイダンはヒバマタ属由来フコイダンよりも強く、結合を阻害した。ピロリ菌と胃がん細胞の結合阻害メカニズム分析の結果、ピロリ菌とフコイダンを前処理することでフコイダンの阻害効果が強くなった。またフコイダンは、ピロリ菌の胃細胞への付着ステップであるLebやスルファチドとの結合も阻害した。さらに、ピロリ菌細胞表面にフコイダン結合タンパク質が検出された。以上の結果から、オキナワモズク属由来フコイダンは、ピロリ菌表面をフコイダンで覆うことで、ピロリ菌と胃細胞の結合を阻害することがわかった。
|
__________________________________________________
No. 4 |
Structural study of fucoidan from Cladosiphon okamuranus TOKIDA |
オキナワモズク由来フコイダンの構造研究 |
Masato Nagaoka(※), Hideyuki Shibata, Itsuko Kimura-Takagi, Shusuke Hashimoto, Kazumasa Kimura, Takashi Makino, Ritsuo Aiyama, Sadao Ueyama & Teruo Yokokura |
※ ヤクルト中央研究所 |
Glycoconjugate Journal 16, 19-26(1999) |
オキナワモズクから分離されたフコイダンについて構造研究を行った。多糖類は、フコース、グルクロン酸および硫酸塩を約6.1:1.0:2.9のモル比で含んでいた。スミス分解の結果は、この多糖が4位置に半分の硫酸置換がある1→3結合α-フコピラノースの線形骨格を持ち、フコース残基の一部がO-アセチル化されていることを示した。 部分的な酸加水分解、メチル化分析、NMRスペクトルから得られたデータは、α-グルクロン酸残基が、硫酸基で置換されていないフコース残基の2位置にリンクしていることを示していた。 これらの結果は、このフコイダンの平均構造が次のとおりであることを示した:-[(→3Fuc-4(±OSO3-)α1-)]→3 [GlcAα1→2]Fucα1-] n-。(各フコース残基の半分は硫酸化されていた。6つのフコース残基ごとに1つのO-アセチルエステルが存在していた。)
|
__________________________________________________
No. 5 |
Anti‐ulcer effects and biological activities of polysaccharides from marine algae |
海藻類多糖類の抗潰瘍効果と生物活性 |
Masato Nagaoka(※), Hideyuki Shibata, Itsuko Kimura‐Takagi, Shusuke Hashimoto, Ritsuo Aiyama, Sadao Ueyama Teruo Yokokura |
※ ヤクルト中央微生物研究所 |
BioFactors 12(2000) 267-274 |
海藻に含まれている寒天、カラギーナン、アルギン酸塩、ラミナラン、ラムナン硫酸塩、フコイダンなどの多糖類の構造と機能について概説した。寒天は紅藻に含まれており、構造にはd-ガラクトースの代わりに4-結合I-ガラクトースがある。寒天はゼリーのゲル化剤として使用されている。カラギーナンは紅藻に含まれており、基本的な構造はd-ガラクタンである。カラギーナンは増粘剤、安定剤、乳化剤として機能している。アルギン酸塩は褐藻に含まれており、d-マンヌロン酸とI-グルロン酸で構成されている。アルギン酸塩は増粘剤として使用され、マヨネーズやケッチャプなどの油と水の乳化を安定させる。ラミナランは褐藻に含まれており、構造的特徴は(1-3)-および(1-6)-結合したβ-d-グルコピラノシル残基が分岐点として(1-6)-結合を持つ鎖を形成する。ラミナランは免疫反応を刺激し、腫瘍細胞に細胞毒性活性を誘発する。ラムナン硫酸は緑藻に含まれており、主にO-2の位置にある硫酸基で置換されているα1、3-結合I-ラムノース残基で構成されている。いくつかの種類は、抗腫瘍および抗HIV活性などの生物学的機能を持っている。フコイダンは褐藻に含まれており、オキナワモズク属フコイダンは2モルのフコースごとに1つの硫酸基を持ち、6モルのフコースごとに1つのグルクロン酸残基を分岐鎖として持っている。オキナワモズク属フコイダンは、非腫瘍性消化不良に有用な効果があることが示唆されている。これらの多糖類は毒性や刺激がほとんどないため、人間の健康を維持するのに役立つと考えられる。
|
__________________________________________________
No. 6 |
Attenuation of N‐nitrosodiethylamine‐induced liver fibrosis by high‐molecular‐weight fucoidan derived from Cladosiphon okamuranus |
オキナワモズク由来の高分子量フコイダンによるN-ニトロソジエチルアミン誘起肝線維化の抑制効果 |
Kyoumi Nakazato(1), Hisashi Takada(1), Masahiko Iha(2), Takeaki Nagamine(1) |
1 群馬大学医学部保健学科、2 株式会社サウスプロダクト |
Journal of Gastroenterology and Hepatology 25(2010) 1692-1701 |
フコイダンには肝線維症の動物モデルに対する抗線維化作用が報告されているが、その正確なメカニズムは不明である。そこで、DEN(N-ニトロジエチルアミン)によって誘発されたラットの肝線維症を用いて、フコイダンの抗線維形成作用を調べた。DENを注射することにより肝線維症を誘発させたラットに、分子量の違うフコイダンを経口投与した。その結果、高分子量フコイダン群では肝臓の線維症が大幅に減少し、総ビリルリン(増加すると黄疸が起きる)のレベルが有意に低くなった。また、高分子量フコイダン群では、肝臓のヒドロキシプロリン(コラーゲン中に見られるアミノ酸)のレベルが大幅に抑制され、TBARS(酸化ストレスによって濃度が上昇する)レベルも有意に低下した。さらに、TGF-β1(細胞の増殖抑制因子)陽性細胞はフコイダン群よりもDENのみの群でより頻繁に見られた。CXCL12(炎症の形成に関与するタンパク質)陽性領域の数は、高分子量フコイダン群で有意に低く、MT(酸化ストレスなどで合成される)の発現は高分子量フコイダン群で顕著に増加した。これらの結果から、オキナワモズクの高分子量フコイダンは、TGF-β1およびCXCL12発現のダウンレギュレーションと脂質過酸化の低減を通じて抗線維化効果を発揮する可能性があると示唆された。
|
__________________________________________________
No. 7 |
Structures of Oligosaccharides Derived from Cladosiphon okamuranus Fucoidan by Digestion with Marine Bacterial Enzymes |
海洋細菌酵素の消化によってオキナワモズクフコイダンから派生されたオリゴ糖の構造 |
Takeshi Sakai(1), Kumiko Ishizuka, Kazuo Shimanaka, Katsushige Ikai & Ikunoshin Kato |
1 タカラバイオ バイオテクノロジー研究所 |
Mar. Biotechnol. 5, 536-544, 2003 |
オキナワモズク由来フコイダンは、抗腫瘍効果やヘリコバクターピロリ感染の抑制などの活性を示すが、その化学構造は解明されておらず、平均的な構造のみが報告されている。そこで、フコイダン分解酵素を利用してオキナワモズク由来フコイダンから数種類のオリゴ糖を取得し、その構造を調べた。その結果、オリゴ糖の構造のいくつかは、1つの一般的な構造式(-3L-Fucpa1-3L-Fucp(4-O-sulfate)a1-3L-Fucp(4-O-sulfate)a1-3(D-GlcpUAa1-2)L-Fucpa1)m-3L- Fucpa1-3L- Fucp(4-O-sulfate)a1-3L-Fucp(4-O-sulfate)a1-3L-Fucp(m = 0、1、2、または3)で表された。また、得られたすべてのオリゴ糖は、オキナワモズクの硫酸化フコース含有多糖に由来する。これは、(-3L-Fucpa1-3L-Fucp(4-O-sulfate)a1-3L-Fucp(4-O-sulfate)a1-3(D-GlcpUAa1-2)L-Fucpa1-)の繰り返し単位を持っていた。
|
__________________________________________________
No. 8 |
Fucoidan derived from Cladosiphon okamuranus Tokida ameliorates murine chronic colitis through the down‐regulation of interleukin‐6 production on colonic epithelial cell |
オキナワモズクフコイダンは、結腸上皮細胞におけるIL-6の合成をダウンレギュレートすることにより、マウス慢性大腸炎を改善する |
S. MATSUMOTO(1), M. NAGAOKA(1), T. HARA(1), I. KIMURA‐TAKAGI(1), K. MISTUYAMA(2), S. UEYAMA(1) |
1 ヤクルト中央微生物研究所、2 久留米大学医学部第二内科 |
Clin Exp Immunol 2004; 136:432-439 |
IL-6(インターロイキン:炎症性および抗炎症性として作用する)は、炎症性腸疾患患者の固有層細胞から分泌される主要なサイトカインの1つであり、慢性大腸炎の発症に重要な役割を果たす。そこで、マウス結腸上皮細胞株におけるIL-6(インターロイキン)の産生に対する、様々な褐藻由来のフコイダンの影響を調べた。CMT-93細胞(マウス結腸がん細胞株)を刺激してIL-6(インターロイキン)を産生させる際にフコイダンを添加した結果、オキナワモズク由来フコイダンとガゴメコンブ由来フコイダンはIL-6(インターロイキン)合成を抑制した。また、慢性大腸炎を誘発させたマウスにフコイダンを投与した結果、オキナワモズク由来フコイダンを与えられたマウスで、体重減少、下痢、潜血などの疾患活動性指数のすべてのスコアが減少した。このマウスの固有層リンパ球のサイトカインは、IL-6などの炎症誘発性サイトカインの産生を示したが、オキナワモズク由来フコイダンを投与したマウスではダウンレギュレートされた。これらの結果から、オキナワモズク由来フコイダンは、結腸上皮細胞におけるIL-6の合成をダウンレギュレートすることにより、マウスの慢性大腸炎を改善したことがわかり、ヒトの炎症性腸疾患を予防する食事性物質として有用である可能性が示唆された。
|
__________________________________________________
No. 9 |
Proportion of Murine Cytotoxic T Cells is Increased by High Molecular-Weight Fucoidan Extracted from Okinawa mozuku (Cladosiphon okamuranus) |
オキナワモズクから抽出された高分子フコイダンによりマウス細胞傷害性T細胞の割合の増加 |
Jun Shimizu(a), Urara Wada-Funada(a), Hiroshi Mano(a), Yoshiharu Matahira(b), Mitsuaki Kawaguchi(b), and Masahiro Wada(a) |
a 城西大学薬学部臨床栄養学・人間栄養学科、b 焼津水産化学工業株式会社研究開発本部 |
Journal of Health Science, 51(3) 394-397(2005) |
オキナワモズクから抽出したフコイダンが、マウス脾細胞におけるCD4(免疫系細胞に発現する糖タンパク)、CD8(T細胞受容体の共受容体として働く膜貫通糖タンパク質)、CD3(T細胞の活性化に関与するタンパク質複合体)、CD11b(NK細胞表面抗原)の発現に及ぼす影響を調べた。マウスに分子量の異なるフコイダンを経口投与した結果、HF群(高分子量フコイダン)ではCD4+とCD8+の比率が増加した。また、CP群(対照)とHF群(高分子量フコイダン)のCD3+の比率は、LF群(低分子量フコイダン)よりも有意に高くなり、HF群(高分子量フコイダン)のCD11b+の比率は、MF群(中分子量フコイダン)よりも有意に増加した。これらの結果から、フコイダンの分子量の違いがマウスの免疫機能と関連していることが示され、高分子フコイダンはマウスの細胞障害性T細胞の割合の増加を促進することを示唆した。
|
__________________________________________________
No. 10 |
Effects of Fucoidan from Mozuku on Human Stomach Cell Lines |
もずくのフコイダンがヒトの胃細胞株に及ぼす影響 |
Hitoshi KAWAMOTO(1,2), Yasunari MIKI(1), Takayuki KIMURA(1), Katsunori TANAKA(2), Tsuyoshi NAKAGAWA(3), Makoto KAWAMUKAI(2), Hideyuki MATSUDA(2) |
1 海産物のきむらや、2 島根大学生命環境科学部応用生物科学科、3 島根大学総合科学研究センター |
Food Sci. Technol. Res 12(3),218-222, 2006 |
フコイダンには様々な生理活性を持つことから、ヒトの胃細胞株に対するフコイダンの効果について調べた。5-FU(抗がん剤)存在下でのHs677.st細胞(正常胃細胞)の増殖を、様々な多糖類を添加して比較した結果、オキナワモズク由来フコイダンは5-FU(抗がん剤)に抑制効果を示した。また、5-FU(抗がん剤)存在下でのMKN45細胞(胃がん細胞)の増殖を、様々な多糖類を添加して比較した結果、ブラダーラック由来フコイダンとオキナワモズク由来フコイダンは細胞の成長を阻害した。さらに、5-FU(抗がん剤)が存在しない条件下でのフコイダンの効果を調べた結果、Hs677.st細胞(正常胃細胞)には影響を与えなかったが、MKN45細胞(胃がん細胞)の増殖が減少した。これらの結果から、フコイダンは正常な細胞増殖には影響を与えず、がん細胞にのみ影響を及ぼすことが示された。特にオキナワモズク由来フコイダンは、がん治療に役立つ可能性が期待される。
|
__________________________________________________
No. 11 |
The Efficacy of Fucoidan on Gastric Ulcer |
胃潰瘍に対するフコイダンの有効性 |
Mohammad Juffrie(1), Ina Rosalina(2), Wahyu Damayanti(1), Ali Djumhana(3), A. Ariani, Harjono Ahmad(4) |
1 ガジャマダ大学医学部小児科、2 パジャジャラン大学医学部小児科、3 パジャジャラン大学医学部内科、4 ブラウィジャヤ大学医学部内科 |
Indonesian Journal of Biotechnology, December, 2006 |
硫酸化多糖類は胃の消毒活性を発揮することが報告されていることから、硫酸化多糖類の一種であるフコイダンの胃潰瘍に対する有効性を調査した。潰瘍のある患者に1日100mgのフコイダンを3週間投与した。その結果、潰瘍のグレードはプラセボ群の37.5%と比較して、フコイダン群は94%が有意に改善した。また、フコイダン群ではプラセボ群と比較して3日後に膨満が有意に減少、5日後に腹痛が有意に減少した。これらの結果から、フコイダンは胃潰瘍患者に対して抗潰瘍効果があることがわかった。
|
__________________________________________________
No. 12 |
Anti-proliferative activity of oversulfated fucoidan from commercially cultured Cladosiphon okamuranus TOKIDA in U937 cells |
U937細胞におけるオキナワモズクフコイダン由来の過硫酸化フコイダンの抗増殖活性 |
Takeshi Teruya(a), Teruko Konishi(b), Shuntoku Uechi(b), Hajime Tamaki(b), Masakuni Tako(b) |
a 鹿児島大学大学院連合農学部、b 琉球大学農学部生物資源科遺伝子工学・生化学 |
International Journal of Biological Macromolecules 41 (2007) 221-226 |
フコイダンの硫酸基は、その生物学的活性において重要な役割を果たす可能性があることから、過硫酸化フコイダンの抗増殖活性およびU937細胞(ヒト白血病細胞株)に対するアポトーシスの誘導に対する効果を調べた。オキナワモズクからフコイダンとその硫酸塩誘導体を調整した結果、天然フコイダンと過硫酸化フコイダンの硫酸塩含有量は、それぞれ13.5%および32.8%と推定された。また、天然フコイダンと過硫酸化フコイダンでU937細胞を処理した結果、過硫酸化フコイダンは用量依存的にU937細胞の増殖を抑制したが、天然フコイダンの活性は弱かった。アポトーシスの形態学的特徴も過硫酸化フコイダンで処理したU937細胞で観察された。さらに、過硫酸化フコイダンがアポトーシスに関わる酵素であるカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7を活性化した。これらの結果から、フコイダン分子の硫酸塩含有量が抗増殖活性に重要な要因であること、過硫酸化フコイダンがカスパーゼ-3およびカスパーゼ-7の活性化に関連するアポトーシスを誘導することによって抗増殖効果を示したことが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 13 |
Prophylactic Effect of Dietary Seaweed Fucoidan against Enteral Prion Infection |
海藻フコイダンの経腸プリオン感染症に対する予防効果 |
Katsumi Doh-ura(1), Tomoko Kuge(2), Miyuki Uomoto(1), Keiko Nishizawa(1), Yuri Kawasaki(1), and Masahiko Iha(3) |
1 東北大学大学院医学系研究科、2 九州大学大学院医学研究院神経病理学、3 株式会社サウスプロダクト |
ANTIMICROBIAL AGENTS AND CHEMOTHERAPY,June 2007, p.2274-2277 |
一般的に食べられているフコイダンの抗プリオン活性について調べた。オキナワモズク由来フコイダンの存在下で、3つの異なるプリオン感染神経芽細胞腫(NB細胞)を培養した結果、高分子量のフコイダンが異常なプリオンタンパク質の形成を阻害した。また、Tg7マウス(プリオンタンパクを過剰発現した遺伝子改変マウス)に、263K(プリオン株)とフコイダンの混合物を脳内摂取した結果、高分子フコイダンを最も含む混合物のみが対照と比較して潜伏期間を有意に増加させた。これらの結果から、フコイダンの摂取はプリオン汚染物質の摂取によって引き起こされるプリオン病の予防効果があることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 14 |
Fucoidan, a major component of brown seaweed, prohibits the growth of human cancer cell lines in vitro |
褐藻の主成分であるフコイダンはin vitroでヒトのがん細胞株の増殖を阻害する |
SUGURU FUKAHORI(1-3), HIROHISA YANO(1,3), JUN AKIBA(1,3), SACHIKO OGASAWARA(1,3), SEIYA MOMOSAKI(1,3), SAKIKO SANADA(1,3), KEITARO KURATOMI(1,3), YASUHIRO ISHIZAKI(1,3), FUKUKO MORIYA(1,3), MINORU YAGI(2,3) and MASAMICHI KOJIRO(1,3) |
1 久留米大学医学部病理学科、2 久留米大学医学部小児外科、3 久留米大学21世紀COE先端がん治療センター |
MOLECULAR MEDICINE REPORTS 1:537-542, 2008 |
フコイダンは、さまざまな生理活性に関与していることが報告されているが、抗腫瘍効果のメカニズムは分かっていない。そこで、オキナワモズクから抽出したフコイダンを15のヒトがん細胞株[肝細胞がん(KIM-1、KYN-1、KYN-2、KYN-3、HAK-1A、HAK-1)、胆管がん(KMC-1)、胆嚢がん(KMG-C)、卵巣がん(KOC-5C、KOC-7C)、胚芽種(HuH-6)、神経芽腫(SK-N-SE)、腎がん(KURU II、KURU、OSRC2)]に添加して抗腫瘍効果を調べた。その結果、13の細胞株で細胞増殖が時間および用量依存的に抑制され、肝細胞がん、胆管がん、胆嚢がんの細胞株で顕著であった。また、アポトーシス細胞の比率は、6つの肝細胞がんの細胞株のうち5つで有意に増加し、G2 / M期の細胞の比率は、3つの肝細胞の細胞株で増加した。これらの結果から、フコイダンの抗腫瘍効果のメカニズムは、アポトーシスの誘導と細胞周期の阻害を含むことが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 15 |
Intracellular Changes of Metal Elements by Fucoidan Extracted from Brown Seaweed (Cladosiphon okamuranus) |
オキナワモズクから抽出されたフコイダンによる金属元素の細胞内変化 |
T. Nagamine(1,2), H. Takada(1,2), T. Kusakabe(1,2), K. Nakazato(1), T. Sakai(3), M. Oikawa(2,3), T. Kamiya(2,3), K. Arakawa(2,3), M. Iha(4) |
1 群馬大学医学部保健学科、2 群馬大学21世紀COEプログラム、3 日本原子力研究開発機構、4 株式会社サウスプロダクト |
Bio Trace Elem Res 2008 Jul;124(1):60-9 |
フコイダン結合金属は生物活性に関わると推測されており、Al(アルミニウム)の吸着は重金属の取り込みを妨げる可能性がある。そこで、オキナワモズクから抽出されたフコイダンを投与した後の、細胞内における金属元素の変化について調査した。TRL1215細胞(正常なラット肝細胞)にフコイダン処理を行った結果、1.0 mg/mlフコイダン処理細胞でMTタンパク質(金属と結合する性質を持つタンパク質)が観察された。また、Mg、Al、Fe、およびZnの細胞レベルは、0.1 mg/mlフコイダン処理細胞およびコントロールと比較して、1.0 mg/mlフコイダン処理細胞で有意に増加した。Al、Mg、Znの収率は、1.0 mg/mlフコイダン処理細胞、0.1 mg/mlフコイダン処理細胞、コントロールの順に高く、Fe収量はフコイダン投与により穏やかに増加した。これらの結果から、フコイダンが正常ラット肝細胞におけるAl, Mg, Fe, Znの蓄積を増加させることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 16 |
Inhibitory Effect of Fucoidan on Huh7 Hepatoma Cells Through Downregulation of CXCL12 |
CXCL12のダウンレギュレーションを介したHuh7肝がん細胞に対するフコイダンの阻害効果 |
Takeaki Nagamine(1), Kou Hayakawa(2), Takahiko Kusakabe(1), Hisashi Takada(1), Kyomi Nakazawa(1), Etuko Hisanaga(3), masahiko Iha(4) |
1 群馬大学大学院健康科学研究科、2 国立成育医療研究センター内分泌・代謝科、3 群馬大学大学院医学研究科、4 サウスプロダクト |
Nutrition and Cancer, 2009, 61(3), 340-347 |
フコイダンがCXCL12(細胞から分泌されるタンパク質)とCXCR4(CXCL12に特異的な受容体)の発現を調整し、肝がん細胞に対して抗腫瘍活性を発揮するかどうかを調査した。その結果、フコイダンが濃度依存的に肝がん細胞であるHuh7細胞とHepG2細胞の増殖を阻害した。フコイダン処理後のα-フェトプロテイン(肝がんの腫瘍マーカー)の量は、Huh7細胞では減少したのに対し、HepG2細胞では変化しなかった。Huh7細胞では、フコイダンによってCXCL12 mRNAの発現が減少したが、CXCR4 mRNAの発現は変化しなかった。HepG2細胞では、CXCL12 mRNAおよびCXCR4 mRNAはほとんど発現していなかった。さらに、フコイダンは細胞周期を穏やかに停止させ、Huh7細胞にアポトーシスを誘導した。これらの結果から、フコイダンがCXCL12の発現を抑えてHuh7細胞に対して抗腫瘍活性を示すことが示された。
|
__________________________________________________
No. 17 |
Structural characteristics and in vitro macrophage activation of acetyl fucoidan from Cladosiphon okamuranus |
オキナワモズクからのアセチルフコイダンの構造特性とin vitroでのマクロファージ活性化 |
Takeshi Teruya, Hideki Tatemoto, Teruko Konishi & Masakuni Tako |
琉球大学農学部生物資源 |
Glycoconj J (2009) 26:1019-1028 |
オキナワモズクから得られたアセチルフコイダン(CAF)の構造特性と、アセチルフコイダン(CAF)によるマクロファージ活性化のメカニズムを調査した。その結果、アセチルフコイダン(CAF)は、α-1→3結合L-フコシル残基と、主鎖のC-4にある置換された硫酸基とアセチル基で構成されていた。また、アセチルフコイダン(CAF)がマクロファージの活性化を誘導し、一酸化窒素(NO)、TNF-αとIL-6(免疫に関わるタンパク質)の産生をもたらすことがわかった。一酸化窒素(NO)は、膜受容体(TNR4、CD14、SRA)およびMAPK(細胞のさまざまな機能に関与する酵素)経路を介して産生されたこともわかった。なお、アセチルフコイダン(CAF)による一酸化窒素(NO)の産生にはアセチルフコイダン(CAF)の構造上の硫酸基とアセチル基が関与していることがわかった。これらの結果から、アセチルフコイダン(CAF)は膜受容体(TLR4、CD14、SRA)およびMAPKシグナル伝達経路を介して、マクロファージの活性化を誘導することが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 18 |
Development of a Fucoidan-Specific Antibody and Measurement of Fucoidan in Serum and Urine by Sandwich ELISA |
フコイダン特異的抗体の開発とサンドイッチELISAによる血清中および尿中のフコイダンの測定 |
Yoshiharu TOKITA(1), Katsuyuki NAKA JIMA(1), Hiroshi MOCHIDA(2), Masahiko IHA(3), Takeaki NAGAMINE(1) |
1 群馬大学医学部保健学科、2 株式会社蛋白精製工業、3 株式会社サウスプロダクト |
Biosci. Biotechnol. Biochem, 74 (2) 2010 |
多糖類であるフコイダンの腸管吸収は、その構造的特徴から困難であると考えられてきた。フコイダンの効果とそのメカニズムをin vivo(生体内分析)で解明するには、特定の高感度フコイダン分析法を開発する必要がある。そこで、オキナワモズクに対する新規抗体を作成し、血清および尿中フコイダンの測定のための高感度なサンドイッチELISA法(抗体を使った測定法)を開発した。ウサギを使用してフコイダン抗体を作成し、フコイダンを検出する方法として使用できるか検討した。その結果、フコイダン抗体は他の多硫酸化多糖類と反応することはなく特異的だった。また、フコイダンサンプルを3倍希釈しても検出された。22〜45歳の健康な男性ボランティア10人にフコイダンを経口投与し、血清および尿中のフコイダンの濃度を測定すると、投与前には検出されず経口投与後6時間と9時間後には検出され、その濃度は顕著に増加した。これらの結果から、フコイダン特異的抗体を使用したELISA法は、経口投与後の血清中および尿中フコイダン濃度のモニタリングを可能にし、実用的であることがわかった。
|
__________________________________________________
No. 19 |
Cardioprotective activity of Cladosiphon okamuranus fucoidan against isoproterenol induced myocardial infarction in rats |
ラットのイソプロテレノール誘発心筋梗塞に対するオキナワモズクフコイダンの心臓保護活性 |
Paul Thomes(a,b), Murugan Rajendran(a), Balu Pasanban(a), Ramasamy Rengasamy(a) |
a マドラス大学植物学高等研究センター、b ネブラスカ医療センター内科 |
Phytomedicine 18 (2010) 52-57 |
オキナワモズク由来フコイダンの心筋梗塞に対する心臓保護活性を評価するため、ラットを用いたフコイダン経口投与試験を行った。ラットを4つのグループ(コントロール、イソプロテレノールのみ、フコイダンのみ、イソプロテレノール+フコイダン)に分け、各種成分の変化を調べた。イソプロテレノール(薬剤の一つ)は心筋梗塞を引き起こすために投与した。その結果、イソプロテレノールを投与したラットは、血清中のマーカー酵素(臓器が破損するとそこに存在する酵素が血液中に流れ出る)と過酸化脂質(脂質が参加されたもので動脈硬化などを引き起こす)が増加し、抗酸化酵素や非抗酸化酵素の活性を低下させ、脂質成分を変化させた(悪玉コレステロールは増加し、善玉コレステロールは減少した)。一方、フコイダンを投与したラットは、イソプロテレノールとは反対の働きをし、イソプロテレノールの反応を抑える反応が見られた。これらの結果から、フコイダンはイソプロテレノールで誘発された心筋梗塞に対して心臓を保護する働きがあることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 20 |
Effects of Oral Administration of Fucoidan Extracted from Cladosiphon okamuranus on Tumor Growth and Survival Time in a Tumor-Bearing Mouse Model |
オキナワモズクから抽出されたフコイダンの経口投与が腫瘍を有するマウスモデルにおける腫瘍の成長と生存時間に及ぼす影響 |
Kazuo Azuma(1), Toshitsugu Ishihara(1), Hiroyuki Nakamoto(1), Takao Amaha(1), Tomohiro Osaki |
1 鳥取大学獣医学部獣医学科 |
Mar. Drugs2012,10,2337-2348 |
オキナワモズク由来フコイダンの抗腫瘍活性を調べるため、マウスに対するフコイダン経口投与試験を行った。結腸に腫瘍を保有するマウスに様々な分子量のフコイダン(低分子量、中分子量、高分子量)を約5g/kg・日与えた結果、中分子量フコイダンを与えたグループで腫瘍組織重量が有意に減少し、腫瘍組織の細胞分裂の数も減少した。また、すべての分子量のグループでマウスの生存期間が延びた。さらに、中分子量フコイダンと高分子量フコイダンの経口投与は、脾臓組織のNK細胞集団のサイズを増加させた。これらの結果から、フコイダンは抗腫瘍活性を有する食品であることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 21 |
Anti-tumor activity of fucoidan is mediated by nitric oxide released from macrophages |
フコイダンの抗腫瘍活性はマクロファージから放出される一酸化窒素を介す |
KAORI TAKEDA(1,2), KOH TOMIMORI1(3), RYUICHIRO KIMURA(1,4), CHIE ISHIKAWA(1,4), TAMARA K. NOWLING(5) and NAOKI MORI(1) |
1 琉球大学大学院医学研究科微生物腫瘍学、2 金秀バイオ株式会社、3 那覇市立病院精神科、4 琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構、5 サウスカロライナ大学医学部内科 |
INTERNATIONAL JOURNAL OF ONCOLOGY 40: 251-260, 2012 |
フコイダンは腫瘍細胞に対して細胞毒性活性を示すが、そのメカニズムは解明されていない。そこで、フコイダンの抗腫瘍活性をin vivo(動物試験)とin vitro(細胞試験)で調べた。In vivoでは、免疫機能を持たないマウスにS-180細胞(腫瘍細胞)を移植してオキナワモズク由来フコイダンを投与した結果、平均腫瘍体積と重量が低くなった。In vitroでは、フコイダンとRAW264.7細胞(マクロファージ由来細胞株)の存在下でS180細胞を培養した。その結果、フコイダンのみではS-180細胞の増殖阻害活性を示さなかったが、RAW264.7細胞と一緒に培養するとS-180細胞の増殖を阻害した。また、フコイダンによってS-180細胞増殖が阻害されるとき、NF-κB(転写因子)によってiNOS(一酸化窒素合成酵素)が発現され、RAW264.7細胞からNO(一酸化窒素)が産生された。これらの結果から、フコイダンの抗腫瘍活性は、NF-κBのシグナル経路を介したRAW264.7細胞のNO産生の増加を通じて起きていることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 22 |
Safety Evaluation of Excessive Ingestion of Mozuku Fucoidan in Human |
もずくフコイダンのヒトにおける過剰摂取の安全性評価 |
Abe S(1), Hiramatsu K, Ichikawa O, Kawamoto H, Kasagi T, Miki Y, Kimura T, Ikeda T. |
1 海産物のきむらや |
Journal of Food Science Vol.78, Nr.4,2013 |
フコイダンの安全性についてはラットで毒性試験が実施されているが、ヒトではほとんど行われていない。そこで、オキナワモズクから抽出したフコイダンを過剰摂取した時の安全性を調査した。健康な20人のボランティアに1日約4gのオキナワモズクフコイダンを2週間経口摂取し、血液および尿の成分と腹部および糞便の状態の変化を調べた。その結果、血液中の総コレステロール(T-Cho)と悪玉コレステロールと呼ばれる低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)が有意な減少を示し、Cl(塩素)は有意な増加を示したが、正常値の範囲であった。これらの結果から、オキナワモズクフコイダンの過剰摂取は、血液および尿、腹部および糞便の状態に全く異常を示さないことがわかった。
|
__________________________________________________
No. 23 |
Determination of the active transport of fucoidan derived from Okinawa Mozuku across the human intestinal Caco-2 cells as assessed by size-exclusion chromatography |
サイズ排除クロマトグラフィーによって評価された、オキナワモズク由来フコイダンのヒト腸Caco-2細胞を横切る能動輸送の決定 |
Nagamine T(a), Hayakawa K(a), Nakazato K(a), Iha M(b) |
a 群馬大学健康科学部、b 株式会社サウスプロダクト |
Journal of Chromatography B, 997 (2015) 187-193 |
オキナワモズク由来フコイダンの輸送メカニズムを調べるため、Caco-2細胞(腸内輸送系モデル)を使用してin vitro試験を行った。その結果、呼吸阻害剤であるアジ化ナトリウムはフコイダンの輸送を62.9%阻害したが、他の多糖であるヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸Cの輸送は阻害しなかった。また、脱共役剤(細胞呼吸を阻害する)であるFCCPはフコイダンの輸送を33%阻害した。ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸Cの輸送は受動的であることから、フコイダンの輸送は能動的であることが示唆された。さらに、コルヒチンやマンニトールはフコイダン輸送に影響を与えないことから、それぞれ食作用/飲作用のメカニズムではない、細胞間結合からの受動輸送ではないことがわかった。これらの結果から、フコイダンは能動輸送(エネルギーに依存した輸送)で輸送されることが確認された。
|
__________________________________________________
No. 24 |
Intestinal Absorption of Fucoidan Extracted from the Brown Seaweed, Cladosiphon okamuranus |
褐藻(Cladosiphon okamuranus)から抽出されたフコイダンの腸管吸収 |
Takeaki Nagamine(1), Kyoumi Nakazato(1), Satoru Tomioka(1), Masahiko Iha(2) and Katsuyuki Nakajima(1) |
1 群馬大学大学院健康科学研究科、 2 株式会社サウスプロダクト |
Mar.Drugs 2015,13, 48-64 |
腸管を介したフコイダンの吸収を調べるため、小腸上皮モデルであるCaco-2細胞を用いた細胞実験(in vitro)およびラットを用いた動物実験(in vivo)を行なった。その結果、Caco-2細胞を横切るフコイダンの輸送は、用量依存的に増加した。また、ラットに2%フコイダンを含む飼料を与えて免疫組織化学染色(抗原抗体反応を利用して組織中の特定物質を調べる手法)を行うと、小腸では空腸上皮細胞、空腸固有層の単核細胞、肝臓では類洞非実績細胞にフコイダンが蓄積することがわかった。さらに、フコイダンと同時に有機化合物ニトロソアミンを投与したラットを調べると、フコイダン陽性細胞は小腸粘膜に豊富に検出された。このフコイダン陽性細胞はマクロファージ陽性細胞としても検出された。これは肝臓においても同様だったことから、フコイダンは小腸でマクロファージに組み込まれて吸収されることが示唆された。これらの結果から、小腸を介したフコイダンの吸収はin vitroおよびin vivoの両方で確認された。
|
__________________________________________________
No. 25 |
A draft genome of the brown alga, Cladosiphon okamuranus, S-strain: a platform for future studies of ‘mozuku’ biology |
オキナワモズクS菌株のドラフトゲノム:「もずく」生物学の将来の研究のためのプラットフォーム |
Koki Nishitsuji(1), Asuka Arimoto(1), Kenji Iwai(2), Yusuke Sudo(2), Kanako Hisata(1), Manabu Fujie(3), Nana Arakaki(3), Tetsuo Kushiro(4), Teruko Konishi(5), Chuya Shinzato(1), Noriyuki Satoh(1), Eiichi Shoguchi(1) |
1 沖縄科学技術大学院大学海洋ゲノミクスユニット、2 沖縄県水産総合研究センター、3 沖縄科学技術大学院大学DNAシーケンス課、4 明治大学農学部、5 琉球大学農学部亜熱帯生物資源科 |
Dna Research, 2016,23(6), 561-570 |
オキナワモズクはフコイダンの重要な供給源であり、さまざまな生理学的および生物学的活性を持っている。海藻の生物学の研究を容易にするため、オキナワモズクS株(品種名:イノーの恵み)の全ゲノムを調べた。オキナワモズクのゲノムサイズは140Mbpと推定され、他の褐藻であるシオミドロとマコンブのゲノムよりも小さかった。そのゲノムに、13,640のタンパク質コーディング遺伝子が含まれていると推定された。また、多糖類(硫酸化フカン、アルギン酸、フロロタンニン)の生合成に関与する酵素の遺伝子を特定した。本研究は、将来のモズク生物学研究における土台となる。
|
__________________________________________________
No. 26 |
オキナワモズク由来フコイダンを配合した飲料による便秘傾向者における便秘改善効果の検証―プラセボ対照ランダム化二重盲検クロスオーバー比較試験― |
友利誠(1,2)、松田考司(1)、中村有花(1)、嘉手納築(1)、下地沙也加(1)、長嶺竹明(1,3)、伊波匡彦(1) |
1 株式会社サウスプロダクト、2 琉球大学大学院 保健学研究科、3 群馬大学名誉教授 |
Jpn Pharmacol Ther (薬理と治療) vol.44 no,11 2016 |
便秘傾向を持つ健常成人に対するオキナワモズク由来フコイダンの便秘改善効果を調査することを目的に、オキナワモズク由来フコイダンを配合した飲料摂取試験を行った。ボランティア66名(男性17名、女性49名)をランダムに2つのグループに分け、二重盲検クロスオーバー試験でフコイダン500mg含有飲料(被験食品)またはプラセボ500 mg含有飲料(対照食品)を毎日2週間投与した。その結果、オキナワモズク由来フコイダンの摂取は、プラセボ摂取よりも排便日数と排便回数が有意に増加することが示された。この結果から、オキナワモズク由来フコイダンは便秘傾向者の便通改善に有用な食品であることが明らかになった。
|
__________________________________________________
No. 27 |
Detection of Fucoidan in Urine after Oral Intake of Traditional Japanese Seaweed, Okinawa mozuku (Cladosiphon okamuranus Tokida) |
日本の伝統的な海藻であるオキナワモズク経口摂取後の尿中フコイダンの検出 |
Yoshiharu TOKITA(1), Minami HIRAYAMA(1), Katsuyuki NAKAJIMA(1), Kenei TAMAKI(2), Masahiko IHA(3), Takeaki NAGAMINE(1) |
1 群馬大学大学院保健学研究科、2 沖縄県勝連漁港、3 株式会社サウスプロダクト |
J Nutr Sci Vitaminol, 63, 419-421,2017 |
オキナワモズクに多く含まれているフコイダンは、分子量が大きく、特定の消化酵素がないためヒトの消化器系に吸収されにくいと長い間考えられてきた。以前に、ヒトおよびラットにおける精製フコイダンの経口投与後の、血清および尿中にフコイダンが検出される可能性が示唆されたが、モズクを摂取・消化後にフコイダンが吸収されるかは不明であった。そこで、モズク摂取前後のフコイダンの吸収を調べるため、沖縄県のボランティア48名と群馬県のボランティア38名にオキナワモズクの経口投与試験を行なった。その結果、沖縄県の人ではモズク摂取後3時間、6時間、9時間の時点で、1名、5名、4名に尿中フコイダン濃度が検出された。また群馬県の人ではモズク摂取後3時間、6時間、9時間の時点で1名、7名、17名に尿中フコイダンが検出された。オキナワモズク摂取後の尿中フコイダン濃度は、摂取前よりも有意に高くなった。これらの結果から、オキナワモズクに含まれるフコイダンはオキナワモズクの摂取・消化後に吸収されることが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 28 |
In vitro and in vivo anti-primary effusion lymphoma activities of fucoidan extracted from Cladosiphon okamuranus Tokida |
オキナワモズク由来フコイダンのin vitroおよびin vivoにおける抗原発性滲出液リンパ腫活性 |
Chie Ishikawa(1,2), Naoki Mori(1) |
1 琉球大学大学院医学研究科微生物学講座、2 琉球大学亜熱帯島嶼科学超域研究推進機構健康科学部門 |
ONCOLOGY REPORTS 38: 3197-3204, 2017 |
硫酸化多糖類であるフコイダンは、がん抑制などの生理活性を持っているが、原発性滲出液リンパ腫(PEL)細胞に対する影響は不明である。そこで、オキナワモズクから得られたフコイダンの抗PEL効果を調査した。PEL細胞をフコイダンの用量を増やしながら処理した結果、PEL細胞の増殖を用量依存的に抑制し、サイクリン依存性キナーゼ(細胞分裂を制御する酵素:CDK4およびCDK8)の下方制御によって、G1細胞周期(細胞増殖の最初の段階)の停止を引き起こした。フコイダンはまた、抗アポトーシス性タンパク質(Bcl-xL、Mcl-1、XIAP)の下方制御によって、PEL細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導した。さらに、フコイダンはがん細胞に関わる因子であるNF-κB、AP-1、TOPKの活性を阻害した。フコイダンをマウスに経口投与した結果、PEL細胞の発生と腹水の発生を抑制した。特に、天然のフコイダンはナノ粒子のフコイダンよりも効果的な抗PEL効果を示した。以上の結果より、フコイダンは抗PEL作用を有しており、PELの予防と治療に役立つ可能性があることを示唆している。
|
__________________________________________________
No. 29 |
Improvement of defecation in healthy individuals with infrequent bowel movements through the ingestion of dried Mozuku powder: a randomized, double-blind, parallel-group study |
乾燥モズク粉末の摂取による排便回数の少ない健康な人の排便改善:無作為化二重盲検並行群間研究 |
Masaki Matayoshi(1), Junjiro Teruya(1), Mina Yasumoto-Hirose(2), Ryuji Teruya(3), Naoki Miura(4), Ryuji Takeda(5) |
1 株式会社沖縄TLO、2 トロピカルテクノプラス、3 沖縄県産業振興公社、4 みうらクリニック、5 関西福祉大学福祉健康科学部福祉栄養科学科 |
Function Foods in Health and Disease 2017; 7(9); 735-742 |
フコイダンなどの多糖類は、腸の機能を調節することが一般的に知られているため、オキナワモズクを使用してこの腸の調節効果を調査した。乾燥したオキナワモズク粉末2.4g/日(フコイダン1.0g/日)を排便の少ない健康な男女に8週間投与し、排便状況などの変化を調べた。その結果、オキナワモズク粉末を摂取すると排便日数や便の量が増加した。この結果から、オキナワモズクの摂取は便秘傾向のある健康な人の排便を促進することにより、腸の機能を調節する効果があることがわかった。
|
__________________________________________________
No. 30 |
Absorption Study of Mozuku Fucoidan in Japanese Volunteers |
モズクフコイダンの日本人ボランティアにおける吸収試験 |
嘉手納築(1)、友利誠(1)、伊波匡彦(1)、長嶺竹明(2) |
1 株式会社サウスプロダクト、2 群馬大学大学院健康科学研究科 |
Marine drugs 2018, 16 254 |
フコイダンの吸収に関する要因を調査するため、日本人ボランティア369名を対象にフコイダン経口投与試験を行った。3gのフコイダンを摂取後、0、3、6、9時間後に尿サンプルを採取し、尿中フコイダン濃度を測定した。その結果、396名の被験者のうち385名の尿からフコイダンが検出した。尿中フコイダンは、沖縄県在住者が沖縄県外在住者よりも有意に高かった。さらに、沖縄県在住者は沖縄県外在住者と比較してモズクを多く摂取しており、モズクを食べる習慣は沖縄県外在住者よりも沖縄県在住者の方が有意に高かった。これらの結果から、モズクを食べる習慣はフコイダンの吸収の要因であると推測された。
|
__________________________________________________
No. 31 |
Composition for promoting secretory iga secretion |
分泌性IgA(免疫物質)の分泌を促進する組成物 |
Mikio MIYAGI、Keiichiro INAFUKU、Yukari IKEHARA |
金秀バイオ株式会社 |
U.S Patent Aug.15,2019 Pub.No.:US20190247422 A1 |
オキナワモズク由来フコイダンの分泌性IgA(免疫物質)の分泌促進効果を調査するため、オキナワモズク由来フコイダン摂取前後の唾液を調べた。その結果、オキナワモズク由来フコイダン摂取後の唾液へのs-IgA分泌率と唾液中のs-IgA濃度が有意に高くなった。一方で、唾液分泌量には有意差は見られなかった。これらの結果から、オキナワモズク由来フコイダンを摂取するとs-IgA分泌を促進できることが示された。
|
__________________________________________________
No. 32 |
Antithrombotic Effect of Oral Administration of Mozuku (Cladosiphon okamuranus, Brown Seaweed) Extract in Rat |
ラットにおけるモズク抽出物(オキナワモズク、褐藻)経口投与における抗血栓作用 |
Toshinori YASUZAWA(1), Akira MIMA(2), Shigeru UESHIMA(1,3,4) |
1 近畿大学農学部食品栄養学科、2 近畿大学腎臓内科、3 近畿大学農学部応用生命科学科、4 近畿大学アンチエイジングセンター |
J Nuti Sci Vitaminol,65,171-176, 2019 |
オキナワモズク抽出物の抗血栓効果を調べるため、オキナワモズク抽出物を添加した細胞培養試験と動物試験を行った。血管内皮細胞にオキナワモズク抽出物を添加した結果、u-PA活性(血栓溶解活性)を有意に増加させた。また、オキナワモズク抽出物を経口投与させたラットに血栓症を発生させた結果、血流量の減少が抑えられ、u-PA活性(血栓溶解活性)も有意に高くなった。これらの結果から、オキナワモズクは血液中の線溶作用(血栓を溶かす作用)を高め、血栓形成を防ぐことを示した。
|
__________________________________________________
No. 33 |
Fucoidan preparation, zinc-bound fucoidan and use thereof |
フコイダンの調製、亜鉛結合フコイダン及びその使用 |
長嶺竹明、伊波匡彦、嘉手納築 |
株式会社サウスプロダクト |
U.S Patent Jan. 3, 2019 Pub.No.:US2019/002595 A1 |
オキナワモズク由来フコイダンの効果を高めるために、フコイダンの吸収量を増やすことも大切である。そこで、フコイダンに亜鉛を配合した調剤と、フコイダンの構造に亜鉛を結合した調剤で、フコイダンの吸収およびその効果を調べた。その結果、いずれもオキナワモズクフコイダンの吸収は促進された。また、HuH-7細胞(ヒト肝細胞由来のがん細胞株)やHep G2細胞(ヒト肝がん由来細胞株)を用いた細胞毒性試験の結果、亜鉛結合オキナワモズクフコイダンの効果がより大きかった。以上の結果から、フコイダンと亜鉛を組み合わせることにより、フコイダンの吸収が促進され、その結果、フコイダンの様々な効果が高まることがわかった。
|
__________________________________________________
No. 34 |
The cooperative induction of macrophage activation by fucoidan derived from Cladosiphon okamuranus and β-glucan derived from Saccharomyces cerevisiae |
オキナワモズク由来フコイダンと出芽酵母由来β-グルカンによるマクロファージ活性化の協調誘導 |
YoshiyukiMiyazaki(ab), YuriIwaihara(ab), JunehaBak(a), HayatoNakano(c), ShugoTakeuchi(d), HideakiTakeuchi(e), ToshiroMatsui(a), DaisukeTachikaw(abf) |
a 九州大学農学部、b NPO法人福岡県フコイダン研究所、c 株式会社ヴェントゥーノ、d 株式会社海藻サイエンスの会、 e KAMERYCAH INC.、f 若宮病院 |
Biochemical and Biophysical Research Communications 516(2019) 245-250 |
RAW264細胞(マクロファージの細胞モデル)を活性化するオキナワモズク由来フコイダンの免疫刺激効果と、出芽酵母由来のβグルカンであるザイモサンとの機能的関係について調査した。RAW264細胞をフコイダンとザイモサンで刺激し、一酸化窒素(NO)と腫瘍壊死因子α(TNF-α)の濃度を測定した。また、フコイダンとRAW264細胞の相互作用を可視化するため共焦点顕微鏡分析を行った。その結果、10μg/mLフコイダンの存在下では、RAW264細胞における一酸化窒素(NO)と腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生が著しく増加した。500ng/mLザイモサンとの併用では、フコイダンの刺激効果が最大限に増強された。共焦点顕微鏡分析の結果、フコイダンは細胞膜上で結合していることが示唆された。食作用(異物を取り込み分解する作用)の阻害剤であるサイトカラシンDが免疫増強作用に影響を与えなかった一方、細胞膜に存在する脂質ラフトの破壊剤であるメチル-β-シクロデキストリン(MβCD)が免疫増強作用を低下させたことから、一部の細胞表面分子がフコイダンの受容体として作用したと推定された。さらに、フコイダンによって免疫活性化されたザイモサンの相加的効果は、デクチン-1(細胞膜上に存在するタンパク質)を介していると考えられることが明らかになった。これらの結果から、フコイダンとβ-グルカンが細胞膜上で相互作用を起こすことで自然免疫細胞の活性を強化することが示唆された。
|
__________________________________________________
No. 35 |
Evaluation of the Immunomodulatory Effects of Fucoidan Derived from Cladosiphon Okamuranus Tokida in Mice |
オキナワモズク由来フコイダンのマウスにおける免疫調節効果の評価 |
Makoto Tomori(1,2), Takeaki Nagamine(3), Tomofumi Miyamoto(2) and Masahiko Iha (1) |
1 サウスプロダクト、2 九州大学大学院薬学研究院、3 高崎健康福祉大学健康栄養学科 |
Mar.Drugs2019, 17, 547 |
オキナワモズク由来フコイダンの免疫調節効果を調べることを目的に、マウスによる経口投与試験を行った。8週齢のマウスにフコイダン(0、102.5、205.0、410.0、1025.0 mg / kg)を6週間連続経口投与し、免疫細胞増殖、サイトカイン産生、マクロファージ食作用、および血清抗体濃度を測定した。その結果、フコイダンを投与すると免疫細胞、インターロイキン(IL)-2、マクロファージ食細胞、および血清抗体(IgM、-G、-A)は大幅に増加したが、IL-4、-5、およびIgEは大幅に減少した。これらの結果から、フコイダンは細胞性および体液性免疫を調節することが示された。
|
__________________________________________________
No. 36 |
Structural elucidation of fucoidan from Cladosiphon okamuranus (Okinawa mozuku) |
Cladosiphon okamuranus(オキナワモズク)フコイダンの構造解明 |
|
Seng Joelim(1), Wan Mustapha Wan Aida(1), Sonja Schienser(2), Thomas Rosenau(2), Stefan Bohmdorfer(2) |
1 ケバングサン大学理工学部バイオ機能性食品センター、2 資源生命科学大学 |
Food Chemistry 272 (2019) 222-226 |
|
__________________________________________________
No. 37 |
Improvement of Psoriasis by Alteration of the Gut Environment by Oral Administration of Fucoidan from Cladosiphon Okamuranus |
オキナワモズク由来フコイダンの経口投与による腸内環境の変化における乾癬の改善 |
Masanobu Takahashi(1), Kento Takahashi(1), Sunao Abe(2), Kosuke Yamada(1), Manami Suzuki(1), Mai Masahisa(1), Mari Endo(1), Keiko Abe(3,4), Ryo Inoue(5) and Hiroko Hoshi(1) |
1 前橋工業高等専門学校生物工学科、2 株式会社海産物のきむらや、3 東京大学大学院農学生命科学研究科、4 神奈川県産業技術総合研究所 食品機能性評価グループ、5 京都府立大学農学生命科学部 |
Mar. Drugs 2020,18,154 |
フコイダンを食事に取り入れることによる乾癬への影響や、ムチン、IgA、細菌叢などの腸内環境成分への変化は報告されていない。そこで、フコイダンが乾癬の症状などに影響を与えるかをm-Traf3ip2マウス(遺伝変異により乾癬が起きるマウス)のフコイダン投与試験で調べた。通常の食事に1%のフコイダンを追加して投与すると、通常の食事をしたマウスは顔に乾癬の症状を示したのに対し、フコイダンを摂取したマウスは顔面症状が改善され、引っかき傷も減少した。糞便微生物叢解析では、フコイダンを摂取したマウスは小腸の微生物叢を大きく変化させた。さらに、フコイダンを摂取したマウスは糞便のムチン量を増加させ、盲腸のIgA含量も増加させた。これらの結果から、フコイダンを摂取すると腸内環境を改善し、ムチンやIgAといった免疫系を保護する物質の産生を増加させることで、免疫疾患の予防に重要な役割を果たす可能性があると示唆された。
|
__________________________________________________
No. 38 |
Activation of NK cells in male cancer survivors by fucoidan extracted from Cladosiphon okamuranus |
オキナワモズク由来フコイダンの男性がん生存者におけるNK細胞活性化 |
Takeaki Nagamine(1), Kizuku Kadena(2), Makoto Tomori(2), Katsuyuki Nakajima(3), Masahiko Iha(2) |
1 高崎健康福祉大学健康栄養学科、2 株式会社サウスプロダクト、3 群馬大学大学院医学系研究科臨床検査医学 |
MOLECULAR AND CLINICAL ONCOLOGY 12: 81-88, 2020 |
|
オキナワモズクから抽出されたフコイダンが、がん生存者のNK細胞活性に対する効果を調べることを目的に、がん生存者に対してフコイダン摂取試験を行った。がん生存者11名(1例〜11例:それぞれ診断と治療が異なる)に6ヶ月間3gのフコイダンを与え、NK細胞活性、フコイダン濃度、腫瘍マーカーなどを調べた。フコイダン摂取後のNK細胞の平均活性は、全被験者において有意な変化はなかったが、性別で分析すると男性はNK細胞の活性化が有意に増加したことが明らかになった。また、血清フコイダンレベルはフコイダンの摂取後に著しく増加し、ピークレベルは30〜198 ng / mlの範囲だった。腫瘍マーカーは7例で基準範囲内となり、基礎値は3例で上昇した。これらの結果から、オキナワモズク由来フコイダンは男性がん生存者のNK細胞を活性化することを示唆している。
|